top of page
執筆者の写真Hinata Tanaka

令和6年能登半島地震の概況と地震の分析について(2024年1月3日)

※この記事は、2024年1月2日午後11時から2024年1月3日午後16時までに報道各社や国・各省庁・地方自治体により発表された情報をもとに構成しています。詳細・最新の情報等は国・地方自治体・企業等のWebサイトをご覧ください。

 

こんにちは、サニーリスクマネジメントです。2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震は、要救助者の生存率が大きく下がる発災後72時間が差し掛かり緊迫した状況である一方、雨による土砂災害のリスクやライフラインの枯渇、海路の活用困難など救助や避難生活の確立に課題が発生している状態です。サニーリスクマネジメントでは、昨日に続き、令和6年能登半島地震の概況についてお伝えします(2024年1月2日の概況についてはこちらをご覧ください)。

 

被害状況

 

発災から2日が経過しようとしていますが、2日午後5時13分3日午前2時21分に最大震度5強の地震が発生し、大きな余震に警戒が必要な状況が続いています。また、時間の経過とともに人的被害は大きくなっています。令和6年能登半島地震による死者は3日午後3時時点で65人(石川県65人)となりました。負傷者については、重症者と軽傷者合わせて約400人(新潟県21人、富山県36人、石川県323人、福井県6人等)となっており、このほかにも石川県では行方不明者が多数発生しています。さらに、総務省消防庁が発表した「令和6年能登半島地震による被害及び消防機関等の対応状況(第10報)」によれば、建物の倒壊についても3日午前8時時点で77件(石川県77件)が確認されていますが、輪島市・珠洲市・能登町・穴水町では件数は調査中として公表されておらず、今後調査が進み次第さらに件数が増加すると予想されます。

 

ライフラインは引き続き途絶した状態が続いているほか、枯渇の恐れも出ています。北陸電力管内においては、3日午後5時時点で石川県内の約32,400戸が停電しています。北陸ガスではガスの供給は継続しているものの、新潟県の一部でガス漏れが発生していると発表し、3日12時時点で289件のガス漏れを受け付けており、うち237件が修理完了、14件が修理対応中となっています。断水は新潟県で約340戸(3日午前10時時点、西区と佐渡市)確認されているほか、和島地区の約1600戸で水道水が濁る被害が出ています。石川県で9万5000戸以上(3日午前8時時点、白山市と加賀市は2日までに解消)断水中、富山県では氷見市全域が断水していましたが、3日午前7時までに宮田地区と窪地区の4000世帯の断水が復旧しています。一方で、3日午前8時時点で約1万世帯の断水が復旧していません。このほかにも、新潟県・石川県・富山県各地の医療機関や高齢者施設、障害者施設などでも停電や断水が発生しています。石川県内の医療については2日から約20隊増の災害派遣医療チーム(DMAT)が38隊投入されています。

 

通信については携帯4社ともに石川県の七尾市、珠洲市、輪島市、志賀町、穴水町、能登町を中心に石川県や新潟県の一部エリアでインターネットや電話が繋がらなかったり、繋がりにくかったりしている状況が続いており、4社は復旧に向けた対応を取るほか、被災した利用者に対して料金減免や支払期限の延長などの支援措置を取ることとしています。また、NTT西日本は3日、自社通信ビルの非常用電源が枯渇した場合の影響について発表し、輪島市と珠洲市の一部はNTTの通信サービスが利用できなくなっている可能性が高いほか、その他の地域についても電源が復旧しなければ順次通信が利用できなくなる可能性があります。

 

交通は概ね復旧していますが、道路や港湾は地震による損壊が大きく、タンクローリーや輸送用トラックなどの大型車両の通行や救難物資を輸送する艦艇の入港が困難となっています。ガソリンの輸送については南部で2日から大型車での輸送を開始した一方で、中部の七尾市などでは一部のガソリンスタンドが被災し営業を停止せざるを得ない状態にあり、他の支援物資を輸送している車両による渋滞などでガソリンの輸送に時間を要しています。北部では道路の破損により大型車が通行できず、小型車やドラム缶での輸送が検討されています。2日に海上自衛隊が救難物資の海上輸送を試みたものの接岸と積み下ろしができなかったことを受け、防衛省では、揚陸艇を使用した砂浜からの積み下ろしやヘリコプター搭載艦を活用した輸送を検討しています。

 

令和6年能登半島地震から見えた当該地震の性質

 

サニーリスクマネジメントでは、1日午後4時6分から3日午後12時54分までに石川県付近で発生した地震について気象庁の発表した地震速報をもとに検知日時・震央・Mj(気象庁マグニチュード)・最大震度を集計し、時系列のグラフを作成しました。最大震度については震度1から震度7まで記載し、5強・6強はそれぞれ「5.75」・「6.75」、5弱・6弱はそれぞれ「5.25」・「6.25」として集計しています。青の折れ線がMjを、オレンジの線が最大震度を表しています。


青とオレンジの折れ線グラフ

 図1 令和6年能登半島地震における地震のタイムライン

 

タイムラインを見てみると、1日午後4時6分の発災でMj5.7、最大震度5強を観測したのち、午後4時10分に一連の地震で最大のマグニチュードであるMj7.6を観測し午後4時18分に最大震度7を観測した発災直後にあたる夕方から5時間ほど経過した1日19時頃には最大震度のボトムラインとして震度3や震度2が出現し、発災直後から地震活動にやや落ち着きが出たことが窺えます。このボトムラインは発災から17時間ほど経過した2日午前9時頃には震度1が多くみれるようになったことで、断続的な大地震の動きは小さくなったと考えられます。しかし、アッパーを見てみると、2日以降は6時間から7時間の間隔で最大震度5強または5弱の強い余震が発生しており、その前後に最大震度4の地震を伴っているケースも確認できます。

 

また、1日午後4時6分から3日午後12時54分までに石川県付近で発生した地震のMjの分布を時系列で見てみると、概ね緩やかな右肩下がりの傾向が確認できる一方で、時間の経過とともに最小値と最大値の開きが大きくなっており、大小様々な地震が発生していることが分かります。


青の分布図

図2 時系列でみるMjの分布

 

サニーリスクマネジメントでは気象庁の発表した地震速報をもとに作成した1日午後4時6分から3日午前11時57分までに発生した地震の震央の大まかな位置をマッピングすることで、令和6年能登半島地震における地震や断層の動向を探ることができました。


地図

図3 令和6年能登半島地震における震央のマッピング

 

このマッピングでは、M(マグニチュード)3以下の地震の震央を薄い赤、M4以上M5以下の地震の震央をやや薄い赤、M5以上M6以下の地震の震央をやや濃い赤、M6以上の地震の震央を濃い赤で示し、最大震度7を観測した1日午後4時18分の地震を白で示しています。震央が集まっている箇所をホットスポットとし、4つに分類しました。1日午後4時18分の地震の震央である県北の「奥能登絶景街道」や石川県道28号線周辺、同じく県北の珠洲岬の西、県北西部の国道249号線と県道7号線の合流地点付近に示した「(a)」は、発災直後からM4以上の地震が多く観測されている地点で、繰り返し大きな地震が発生している場所です。県の北端よりやや南の県道38号線沿いの沿岸、輪島沿岸、名舟海岸周辺、能登半島中央部、海士(あま)岬沿岸、県北西部の国道249号線と県道7号線の合流地点付近、能越自動車道中央部、国道249号線と県道37号線の合流地点付近、志賀町巌門(がんもん)西の海域に示した「(b)」は地震の規模(マグニチュード)に関係なく地震の多い箇所です。(b)を割り振ったホットスポットでは、M2程度からM5程度まで大小様々な地震が断続的に発生しています。1日午後4時18分の地震の震央である県北の「奥能登絶景街道」や石川県道28号線周辺、県北の珠洲岬の西、能登町福光(ふくみつ)の北の地域に示した「(c)」は発災直後特に活発であった箇所です。図では示していませんが、珠洲付近の海域や御舟埼(みふねざき)付近も発災直後に地震が発生しています。海士(あま)岬沿岸、志賀町福浦港(ふくらこう)周辺、志賀町釈迦堂東の地域、柴垣町沿岸に示した「(d)」は発災数日後も活発に地震が発生している場所です。後述の地震調査委員会による資料でも言及されていますが、地震は佐渡島の西から石川県北西部までの北東―南西方向に約150kmの範囲で発生していることが図から分かります。より詳細な調査が必要にはなりますが、地震活動の経過とともに震源が南西へ移動している可能性もあります。

 

地震調査委員会が2日に公表した資料「令和6年能登半島地震の評価」によれば、令和6年能登半島地震は北西―南東方向の逆断層型で、深さ30km以内の浅い地殻内で発生した地震であると明らかになっています。また、国土地理院の輪島観測点では西南西方向に1.2mの変動や1.1mの隆起が見られたほか、地表の動きを捉えて陸の様子を観察する衛星「だいち2号」の観測データの解析により、輪島市で最大4mの隆起と最大1mの西向きの変動が検出されたと記載されています。このほかにも、地震調査委員会は2日午後、令和6年能登半島地震の震源となった断層は未知の断層であることや、当該断層と既知の断層との関係については検討が進んでいないことを明らかにし、令和6年能登半島地震が2020年から続いている一連の地震活動の一つであるという見解を示しています。

 

発災後の緊急対応、徐々に進む

 

共同通信が報じたところでは、気象庁の3日の発表で、令和6年能登半島地震における地震について、3日午後4時までに震度1以上を521回観測したことが明らかになりました。能登半島での地震活動が活発化した2020年から発災前の2023年12月末までの3年間で記録された506回を2日間で超えるほどに多くの地震が発生しており、現在避難している場所での天井の崩落や建物のひび割れが発生する可能性もあります。今後も余震への警戒は十分に行わなければなりません。

 

現在も被災地とその周辺では救助活動や救難物資・支援物資の搬入が行われています。政府は3日、救助等にあたる自衛隊の実働部隊を1000から2000規模に、すでに投入されている救助犬も2倍以上に増強するとしており、救命最優先の方針を強調したほか、首相は消防2000人以上、警察700人以上が全国から応援部隊として集まっていることも説明しました。ほかにも、各自治体や企業により発災後の対応や復旧へ向けた作業などが行われている状況で、すでに政府が2日から支援を開始していた食料や生活物資の一部が3日早朝に被災地に届き始めています。

 

発災から2日、被災地の自治体だけでなく国や関係省庁や企業も緊急支援や復旧に向かい動き、その効果が少しずつ見え始めています。被災地では雨による土砂災害や気温低下が懸念されます、すべての場所で物資が十分であるとはいえない状況ではありますが、救助と復旧への兆しが見えることを願います。

Comments


bottom of page