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BCPの重要性とレジリエンスの効果

こんにちは、サニーリスクマネジメントです。

豪雨や台風など数々の災害が発生している今夏ですが、災害だけでなく国内外の安全保障やサイバーセキュリティ、ビジネスレピュテーションなど多様なリスクにおいて不確実性が増している現代、企業活動を守るにはどのような工夫ができるのでしょうか。例えば、未来を見据えたビジネスの安定性を保つためにはBCPとBCMが欠かせません。突然のリスク発現や予期せぬ事態によって企業が損害を受けるリスクは決して無視できないものです。この記事では、BCPとBCMがなぜ重要なのかについて探っていきます。


まず、直近のBCPに関するトレンドから見ていきましょう。帝国データバンクの調査によれば、BCP策定率はやや伸びたものの策定の意向は減少し3年連続で5割を切っており、策定率も約2割と低調です。また、BCPの目的としているリスクも自然災害が7割と他のリスクへの分散は見られながらも総体的には災害一強の流れが続いています。さらにBCPの策定の阻害要因としては、以前の調査と同じくしてスキル・ノウハウの不足と人材不足が挙げられました。また、タイムパフォーマンスの観点からもBCP策定を躊躇う声が見られます。実際、BCPの策定を実施するとなると、自社のリスクアセスメント(組織内に存在するリスクを探し出し重大性を評価すること)に時間を費やす必要があり、ステークホルダーについても同様のプロセスを行わなければならないため、策定作業以前に多くの時間を要してしまいます。当然、策定作業も多くの項目があるためBCP策定という活動のタイムパフォーマンスには未だ改善点があります。サニーリスクマネジメントでは、リスクアセスメントを手助けするリスク重要度を段階別に示したワークシートや穴埋め式で簡単にBCPの書面を作成できるテンプレート等をご用意し、BCP策定作業におけるタイムパフォーマンス向上を図っています。


さらに同調査を詳しく見ていくと、BCP策定の阻害要因の中には「必要性が感じられない」という意見も一定数存在していることが明らかになっています。危機管理に対しては「緊急時でもどうにかなるから特別に対応せずとも何とかなる」という声も聞かれます。しかし、この声を危機管理の観点から見てみると、背景に「正常性バイアス」がはたらいている可能性が見出されます。正常性バイアスとは、リスク発現の場面やその影響に直面した際にその事象や影響を過小評価したり、見てみぬふりをする、誰もが持つ心の安定機能です。実際にリスクアセスメントをしてみると重大なリスクが見つかることもあり、国土の半分が被災するような災害や国家の安全が揺らぐ有事、今やインフラである通信やサイバー空間でのトラブルなどに挙げられる企業活動を停止せざるを得ない状況に立った場合、決して「どうにかなる」ことはなく、「どうにもならない」可能性が高いことは意識しておかなければなりません。


さいごに、BCPの重要性を見出すことのできるデータをお示しします。東京商工リサーチによる調査では、東日本大震災を受けて次のようなグラフが提示されています。

上のグラフが示すのは、東日本大震災に関連する倒産件数(図1)と負債総額(図2)です。オレンジ色・中央の「間接」に注目すると、図1並びに図2では「間接」が件数や額面の8割から9割を発災後5年以上にわたり占めています。「間接」の対象となる企業は地震・津波・原子力発電所事故等の直接的な被害ではなく、災害に伴うロジスティクスの停止や混乱、取引先企業の直接または間接による倒産の影響を受けています。実際に、島根県を除く46都道府県で関連倒産が発生したほか、発災から10年が経過した2021年であっても倒産や負債が発生するという現状があります。特に関連倒産については大きな地震や火災が顕著であった1995年の阪神・淡路大震災での23都府県に対し、東日本大震災では原子力発電所事故の影響により件数が増加しています。


組織の生き残りをかけたクライシスマネジメントは、リスク発現と同時に開始します。特に大災害や一定の地域における通信障害等においてはそのクライシスマネジメントのオペレーションは緊迫したものになります。ここでBCPの策定とBCMの運用、それに伴うクライシスマネジメントを最大限実施できた場合、より早く中核事業を継続・復旧できるため倒産リスクを最小化することができ健康経営にいち早く戻ることができます。そしてBCP策定並びにBCM運用をより多くの企業で実施することでリスクに強い企業が増加し、国全体のリスクへの強さやレジリエンスを強化することにも繋がります。



【参考文献】

帝国データバンク(2021)「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2023年)

『策定意向あり』3年連続で5割を下回る ~ コロナ禍のリスク低減とスキル・ノウハウ、人手不足が主要因に ~ 」, 2023年6月26日, https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p230612.pdf, 最終閲覧日:2023年8月7日.

東京商工リサーチ(2021).「"震災から10年" 『東日本大震災』関連倒産状況(2月28日現在)」, 2021年3月2日, https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1190508_1527.html, 最終閲覧日:2023年8月7日.



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