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執筆者の写真Hinata Tanaka

世界的脅威と安全のスケール

こんにちは、サニーリスクマネジメントです。

このブログでは社会課題や企業の危機管理など身近なテーマを多く取り扱っていますが、時にはフィクションのような壮大な話題はいかがでしょうか。実はひと口に「危機管理」と言っても、映画のようなビッグスケールのオペレーションが行われていることもあります。SFや社会派・ノンフィクションといったジャンルでみられるような国・世界を巻き込んだ危機管理の取り組みは特に安全保障や情報セキュリティの分野で実行されています。


小説や映画になるほどの壮大なオペレーションはしばしば国際関係に影響を出るようなシリアスでシビアな状況に立たされます。最新のところでは、2023年8月8日に報じられた日本の防衛ネットワーク侵入事案がそれにあたるでしょう。これは、2020年秋頃から2021年初めにかけて防衛省が使用ネットワークが外国からのハッキングにより侵入されていた事案であり、アメリカの国家安全保障局(National Security Agency)から2020年秋と2021年秋の2度の警告があったほか、当時政権からの状況説明、米国サイバー軍からの支援の提案等があったものの、いずれも民間業者による点検と両当局間での協議緊密化という形で収束していたものです。日本の自衛隊とアメリカ軍はサイバー分野でも連携し安全保障を強化したい考えですが、日本政府によるサイバーセキュリティや情報管理と米国の求めるレベルのすり合わせの難しさや日米での連携を踏まえたネットワークの運用方法などの課題が残り、連携強化は難航しています。サイバー攻撃を受けたネットワークでは最も機密性の高い情報を取り扱っていますが情報漏洩は確認されていないほか、任務遂行にも影響は出ていないとされており、日本政府は緊密なやりとりや意思疎通を通して日米の連携や日中関係への対応をしていく方向性を示しています。


本件ではハッキング元が中国軍であることが明らかとなっています。そもそもハッキングやコンピュータウイルスを用いて他国のネットワークを攻撃する手法である「ハッカー戦」は1990年代から始まっていたのですが、インターネットや情報通信技術が高度化し始めた2010年代を皮切りにして、特に権威主義国家を中心に活発化している傾向があり、「ハイブリッド戦争」という通常の武器を用いた戦闘に加え情報戦を加えるという新たな戦術を打ち出した国も存在します。ハッカー戦は極端にいうとコンピュータとハッカーさえ用意できれば成立し、ひとつの攻撃で大きな混乱を引き起こすことのできる可能性があるため、戦車や戦闘機とその操作をする人員を確保するよりもコストパフォーマンスが良いことが特徴です。各国省庁のネットワークへのサイバー攻撃と侵入や2016年米大統領選疑惑、米ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント社へのサイバー攻撃などがハッカー戦の例として挙げられます。


安全保障は文字通り世界全体で繰り広げられる非常に大規模な取り組みであり、また常に大量の機密情報が扱われているため市民に公開される情報もほんの一部に過ぎないため、私たちの生活にはあまり馴染みがないと感じるかも知れません。しかし、有事が発生すればその影響が瞬く間に市民へ渡る可能性もないとは言い切れないのです。情報戦が活発化する現代において防衛として安全保障を実行する場合、武器や設備といったハード面だけでなく、情報セキュリティというソフト面での対策も重要となります。これらの実際の対応は各国の政府や軍、自衛隊が行うのですが、民主主義国においてはその方針を決定するプロセスに選挙という形で私たち市民が参加することができます。また、オンライン・オフラインでの自由な発言の場を通して自らの意見を表明することもできます。実は私たちも、この壮大な危機管理のオペレーションにおけるアクターになることができるのです。





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