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執筆者の写真Hinata Tanaka

令和6年能登半島地震について(2024年1月4日)

※この記事は、2024年1月3日午後17時から2024年1月4日午後21時までに報道各社や国・各省庁・地方自治体により発表された情報をもとに構成しています。詳細・最新の情報等は国・地方自治体・企業等のWebサイトをご覧ください。

 

こんにちは、サニーリスクマネジメントです。2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震は、要救助者の生存率が大きく下がる発災後72時間を過ぎました。この3日間で懸命の救助やライフラインの復旧が進み、被災者の救出や緊急物資の輸送が開始されたり、被害状況の確認が進んだりしていますが、特に被害の大きかった石川県北部を中心に、孤立地域やライフラインの停止した地域が残っています。サニーリスクマネジメントでは、石川県・富山県・新潟県を中心に令和6年能登半島地震の概況と当該地震の簡易的な分析についてお伝えします(2024年1月3日の概況及び3日時点での地震の分析についてはこちらをご覧ください)。

 

地震と津波の調査による発見

 

余震は引き続き断続的に発生しています。最大震度2や1の地震の割合も2日までと比較すると減少していますが、時折最大震度4を観測するやや大きな地震も発生しており、特に石川県では1月6日と7日は雨が降りやすく警報級の大雨のなる可能性があるため、余震と土砂災害への警戒が必要です。地震と地殻変動や津波については各機関で調査が進み、新たな事実が明らかになりました。発災から3日が経過した4日、東京大学地震研究所が令和6年能登半島地震の研究速報を発表するWebサイト「【研究速報】令和6年能登半島地震」を立ち上げました。同Webサイトにて同日発表された「2024年1月1日令和6年能登半島地震(M7.6)で生じた海岸隆起(速報)」によれば、同研究所が1月2日から実施している能登半島北部の海岸地形調査を通して、震源域の南西にある能登半島北西部の海岸で地震により大きな海岸の隆起が発生した可能性や、海岸隆起の小さな場所で津波による被害が確認されていることが明らかになっています。輪島市の鹿磯(かいそ)漁港で約3.9mの海岸隆起が推定されているほか、その東では3m超の海岸隆起だけでなく海岸線約250mの前進が確認されています。鹿磯漁港をはじめとした海岸隆起の大きい場所は海岸に津波痕跡が見られたものの建物の津波被害は見られなかったとされていますが、志賀町赤崎漁港では漁港施設で津波による被害が見られ、倉庫の外壁に残った津波痕跡などから今回の津波の遡上高(津波が陸地を駆け上がった最高地点の高さ)が約4.2mであると推定されています。このほかにも、山陽新聞は新潟県への取材で、上越市の一部で津波が2つの河川の合流地点まで遡上し堤防を超えて溢流した結果、堤防の一部欠損や住宅の床上浸水が1件確認されたことが分かったと報じています。

 

令和6年能登半島地震の被害概況

 

人的被害と建物被害についても、救助や調査により数値としての公表が進み始めました。令和6年能登半島による死者は84人(石川県(輪島市48人、珠洲市23人、穴水町4人等))、負傷者は231人以上(重傷者36人超(石川県30人以上、富山県3人、新潟県3人)、軽傷者195人以上(石川県130人以上、富山県34人、新潟県31人))で、石川県では4日午後6時時点で179人が安否不明の状態にあり、県が一部の行方不明者の氏名等を公表したほか、自衛隊・警察・消防等による救助や捜索が続いています。建物については石川県で全半壊213棟以上、一部破損や床上・床下浸水が40件以上確認されており、富山県では未分類を含め50棟弱、新潟県で全壊1棟、半壊10棟、一部破損513棟、3県で少なくとも800棟の住家被害がみられています。

 

石川県では孤立が続いており、輪島市で14地区(人数確認中)、珠洲市で9地区(約713人等、一部救出中)、七尾市で1地区(約10人)、穴水町の2地区(約21人)、能登町の4地区(約40人等)の合計30地区(約784人等)の孤立集落が確認されています。避難所については石川県で開設中が371箇所で3万3530人が避難中、3日までに4箇所が閉鎖しています。富山県では開設中が39箇所で355人が避難中、4日午前8時までに385箇所が閉鎖しています。新潟県でも3日に新潟市の一部に発令された避難指示が継続中です。ライフラインや交通についても復旧作業が進み供給途絶が解消したり緊急物資が搬入され始めたりした場所もありますが、石川県北部などを中心に利用不能な状態が続いている状態です。

 

【参照資料】

石川県: 「第9回災害対策本部員会議」(1月4日午後5時40分)

 

地震の簡易分析


※2024年1月3日の記事においても地震の時系列グラフや分布、震央マッピングを用いた簡易的な分析を行なっております。詳しくはこちらから。

 

サニーリスクマネジメントでは、1日午後4時6分から4日午後8時43分までに石川県付近で発生した地震について気象庁の発表した地震速報をもとに検知日時・震央・Mj(気象庁マグニチュード)・最大震度を集計し、時系列のグラフを作成しました。最大震度については震度1から震度7まで記載し、5強・6強はそれぞれ「5.75」・「6.75」、5弱・6弱はそれぞれ「5.25」・「6.25」として集計しています。青の折れ線がMjを、オレンジの線が最大震度を表しています。


青とオレンジのグラフ

図1 令和6年能登半島地震における地震のタイムライン(4日午後8時台まで記載)

 

タイムラインを見てみると、震度に関しては発災から48時間後もそれ以前と同じようにアパーとボトムが配置され、震度5強や5弱はみられないものの定期的に震度4が観測されています。マグニチュードについても同じく、それ以前の傾向を引き継いでいるように読み取れます。発災から時間が経過するとともに地震の発生が減少していることが分かります。特に発災から48時間以降はその傾向が顕著で、4日になると地震の観測が少ない時間帯も発生しています。一方で、地震の回数自体は少なくなり前述の通り地震の少ない時間帯が見られるのと同時に、地震の多い時間帯も存在します。つまり、余震の頻度に「波」があるということです。4日午前0時から午後8時までの時間帯別の地震の回数を次に示します。


時間帯(時台)

検知回数(回)

最大M(Mj)

最大震度

0

5

4.8

4

1

1

2.7

1

2

4

3.5

2

3

2

3.1

2

4

6

4.9

2

5

4

3.7

2

6

2

3.2

2

7

2

3.1

2

8

3

3.4

2

9

0

10

4

4.1

3

11

0

12

1

3.5

3

13

2

2.9

2

14

1

2.3

1

15

9

3.9

4

16

2

3.4

1

17

2

5.0

3

18

5

3.4

2

19

2

3.2

3

20

4

4.1

2

表1 石川県周辺における1月4日午前0時から午後8時までの時間帯別地震検知数

 

地震の回数は時間によってばらつきが大きく、1時間で9回地震を検知している時間帯もあれば、一度も検知していない時間帯もあります。地震の回数が多い時間帯は他の時間帯と比べてMjの大きい地震を伴いやすい傾向にある可能性もありますが、すべての場合において同じことがいえるわけではなく、今後のデータも含めた長期的な評価が必要になります。

 

また、1日午後4時6分から4日午後8時43分までに石川県付近で発生した地震のMjの分布を時系列で見てみると、これまでにやや顕著であった最小値と最大値の開きが固定化しつつあり横ばいの傾向に見られ、引き続き大小様々な地震が発生していることが分かります。地震の回数が減少していることで分布も点が目立つような配置になっていますが、M2~M3程度の地震が多く観測されていることが窺えます。


青の分布図

図2 時系列でみるMjの分布(4日午後8時台まで記載)

 

発災期から復旧期へ、フェーズの変わり目

 

救助やライフラインの復旧、緊急物資の搬入が進む中迎えた72時間。地震と津波の被害が大きく大規模火災も発生した石川県北部には、救助を待つ人や安否不明の情報が届いている人が多く残されています。国と自治体が連携し、自衛隊・警察・消防等による救助等や被害の把握、物資等の輸送が行われているほか、一刻も早い復旧のために会議や現場でさまざまな判断や指揮が行われ、トップダウン・ボトムアップの双方で働きかけが進んでいます。

 

復旧期に入るとボランティアや支援物資の受付が始まりますが、現在はまだ国や自治体がリソースを使い自国・地元の持つレジリエンスを活かして復旧へ繋げる発災期。海外からの人員投入支援や一般の支援を容易には受け入れられない状況ですが、基金や募金を通して被災地を応援されているかたもいらっしゃるのではないでしょうか。

 

クライシスマネジメントの要である発災期、住民を救助し避難生活を支援することと地域の復旧の下準備を同時に行う必要のある最も短期間で的確なオペレーションが求められるフェーズがまもなく過ぎようとしています。これからも当ブログでは引き続き定期的に令和6年能登半島地震をリポートします。

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