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発災から10日、令和6年能登半島地震の被災地ニーズと対応

※この記事は、発災から2024年1月10日正午までに報道各社や国・各省庁・地方自治体により発表された情報をもとに構成しています。詳細・最新の情報等は国・地方自治体・企業等のWebサイトをご覧ください。また、この記事では石川県の被災状況等について記載しております。新潟県・富山県等については各県のホームページ等をご覧ください。

 

こんにちは、サニーリスクマネジメントです。2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震の発災から1週間と3日が経過しました。サニーリスクマネジメントでは、発災翌日からこれまで被害概況や当該地震に関する分析、国や自治体の対応、報道の傾向などについてお伝えしてきましたが、この災害は半島部を中心に地震や津波によって大きな被害をもたらしているほか、被災地は発災後の火災や相次ぐ余震、大雨や雪の影響により孤立解消が困難であったり、被害状況の確認を進めることが難しかったりする状況にあります。

 

1月9日: 石川県知事が国に対して要望書を提出

 

令和6年能登半島地震で最も大きな被害を受けている石川県では、9日付で、県知事から国へ要望書が提出されました。この要望書を見てみると、被災地におけるニーズが端的かつ網羅的に示されており、石川県における当該災害による影響と県の想定している応急対策・復旧・復興のスキームを一目で知ることができます。ここでは、発災期・復旧期(I)・復旧期(II)・復興期の4つの災害フェーズに分けながら、石川県の要望書に記載された17の要望と10日正午までに実施された国等の対応や今後の展望を見てみましょう。



オレンジの円

図1 災害フェーズのサイクル

 

石川県から国に提出された17の要望のうち、約半数が発災期の対応に関連しています。『1 激甚災害、特定非常災害及び非常災害への早期指定』、『2 災害応急対応及び本格復旧に向けた十分な人的支援』、『3 食料・飲料水、生活物資等の十分な確保と円滑な供給支援の継続』、『4 生活福祉資金の特例措置の早期適用』、『5 電気、通信網及び現時点で復旧の見通しが立っていない上下水道等のライフラインの早期復旧と復旧までの生活環境の早期改善』、『6 のと里山海道、国道249号、能越自動車道等の幹線道路の早期啓開』、『7 避難所運営への支援(二次的健康被害の防止)』、『8 円滑な災害廃棄物処理に向けた支援や廃棄物処理施設の早期復旧支援、被災した家屋等の解体撤去に対する支援対象の拡大』が発災期の対応に関連した要望です。1についてはすでに7日の非常災害対策本部会議(第6回)で令和6年能登半島地震を「特定非常災害」に指定することが明らかにされています。当該災害の影響のうち、①死者・行方不明者、負傷者、避難者などが多数発生したこと、②住宅の倒壊等が多数発生していること、③交通やライフラインが広範囲にわたって途絶したこと、④地域全体の日常業務や業務環境が破壊されたことなどの要件を考慮して政令により当該災害が「特定非常災害」に指定されることで、運転免許証など行政上の権利利益に係る満了日の延長や薬局の休廃止等の届出義務など期間内に履行されなかった義務に係る免責、債務超過を理由とする法人の破産手続開始の決定の特例など、特定非常災害特別措置法で指定された措置が取られます。2については、まず、ファーストレスポンダー(自衛隊や警察、消防などの救助等を担う機関)として、自衛隊は9日から即応予備自衛官の生活支援活動への従事を開始し、9日時点で陸上自衛隊約4,300名と航空機約20機、海上自衛隊約1,000名と艦艇9隻・航空機4機、航空自衛隊約1,000名と航空機約10機の合計約6,300名と艦艇9隻、航空機約40機の態勢、警察は石川県警察が中心となり、9時午後3時時点で救出救助活動や交通整理を行う広域緊急援助隊(15都府県警察の約1,100名)やパトロール活動等を行う特別自動車警ら部隊(7府県警察約60名)など9日に約1,200名が活動しました。消防については、10日午前7時時点で石川県と新潟県に派遣している緊急消防援助隊等について、石川県では21都府県からの586隊、2,207名とヘリコプター21機が活動しており、新潟県では、1都からの1隊4名が活動しています。自衛隊については、9日の防衛大臣記者会見にて、今後予備自衛官も活動に加わることが発表されており、さらなる人員の拡充が予定されています。また、環境省の人材バンク制度を経由して石川県珠洲市と七尾市に加え能登町に対して東京都等から災害廃棄物対応に知見を有する職員を派遣するなど、自治体連携型の人材支援も行われています(非常災害対策本部会議(第6回)より)。3、5、6、8についても、国の各省庁や自治体、企業等により夜を徹しての継続的な支援や復旧作業が行われています。4については、一時的な生活費を必要とする世帯に対して行う生活福祉資金の支給を被災者に対して行うもので、厚生労働大臣は、7日の非常災害対策本部会議(第6回)にて、これまでの医療・福祉等各分野に加えて生活や生業の再建支援の中核である雇用や労働分野にも対応できるように被災地での対策本部における厚生労働省の人員体制を約40名に拡充すると説明しています。7についても、医療や福祉に関わる厚生労働省や、避難所等で給食支援や入浴支援等避難者の生活支援を実施している自衛隊など国の機関のほか、自治体や避難所運営を行う各主体による避難者への支援や呼びかけによりサポートされる部分もあるでしょう。

 

要望書のうち、復旧期(I)については、『8(前述のため省略)』、『9 仮設住宅・みなし仮設住宅への財政的・手続き的支援』、『10 被災した児童生徒等の就学機会の確保』、『11 非常災害への早期指定による国による権限代行も含めた幹線道路、河川、砂防など公共土木施設、農林水産業施設、病院・福祉施設、文教施設、文化財等の早期復旧支援』、『12 能登空港、のと鉄道等の広域交通インフラの早期復旧支援』の5つが関連しています。10については、被災地の多くの学校が避難所として利用されているほか、校舎の破損やライフライン停止の影響に加え校舎の被災状況の確認や児童生徒・教員の安否確認にも時間を要していることにより、授業の再開が見通せない状況が続いています。一方で、福岡市は9日、令和6年能登半島地震により福岡市に避難している人に関して、福岡市立小中学校や特別支援学校、保育施設、幼稚園への転校や転園を希望する場合に住民票を移さなくても受け入れる対応を決めており、9日時点で児童一人が福岡市内の小学校に転入しています。同市は学校で使用する教科書は無償で提供し、妊婦や乳幼児に対しては福岡市民と同様の健診を行うとするほか、希望者に対して衣類や家具のリユース品を提供することを発表しました。11については前述の通り特定非常災害に指定されたことにより迅速な支援が行われることが期待されます。12についても、国土交通省や交通各社を中心に復旧作業が順次実施されるものとみられます。

 

復旧期(II)については、『13 被災者生活再建支援金の支給対象の拡大』、『14 伝統産業、観光産業、農林水産業等の基幹産業や地域のくらしを支える中小企業の復旧・復興及び雇用の維持』『15 地方が行う災害復旧に係る財政需要に対する補助制度の創設・拡充、地方負担に対する十分な交付税措置などの財政支援』の3つが関連しています。13については、石川県は6日、県内全域における被災者生活再建支援法の適用を決定しており、罹災証明書等を用いた申請で全壊ややむを得ず住宅を解体した世帯に最大300万円、大規模半壊の世帯に最大250万円、中規模半壊の世帯に最大100万円の支援金が支給されます。令和6年能登半島地震に関しては被害の認定調査を待たずの適用であるほか、石川県内で半壊の世帯が住宅を再建する場合は県の支援金として100万円を支給するなど県でも支援拡大の動きがありますが、すでに報告されている被害状況だけでも基準を大幅に超えていることを鑑みると、今後国レベルでのさらなる支援が必要となることが予想されます。14については、独立行政法人中小事業基盤整備機構が4日付で「令和6年能登半島地震による災害に関する特別相談窓口」を関東本部と北陸本部で開設したほか、1日から被災小規模企業共済契約者に対する災害時貸付けを開始しています。15と合わせて、予備費からの支出から新たな財政的支援が提供されることが期待されます(下記16も同様)。

 

復興期については、『14(前述のため省略)』、『16 創造的な復興に係る財政需要に対する補助制度の創設・拡充、復興基金の創設をはじめ、地方負担に対する十分な交付税措置などの財政支援』、『17 頻発する能登半島を震源とする地震の調査研究の早期実施』の3つが関連しています。17については、4日から東京大学地震研究所が研究速報を発表しているほか、9日には東北大学からも能登半島地震を引き起こした断層について、3,000から4,000年間眠っていた活断層が動いたという見解を示すなど、比較的早い段階からの研究が始まっています。災害における学術研究については被災者の生活等に対する配慮も重要で、まずは人命救助と安全が優先されるために研究者の被災地入りには時間がかかることも考慮しなければなりませんが、衛星画像や観測データをはじめとした実地調査以外の調査で早期調査を行うことができる可能性はあります。

 

令和6年能登半島地震の全容解明と復旧に向けて

 

発災から10日、ファーストレスポンダー等による救助活動や国・自治体職員等や学術機関による被災状況の把握と災害メカニズムの研究が進んできた中で、明らかになったこと、未だ調査が進まず不明な部分、研究によって発見された新たな事実と疑問など、多様な情報が発生しました。また、被災地においても、避難所の生活や報道のシーンで一時混乱や情報の錯綜がみられました。また、すでに珠洲市で災害関連死の死者数が6人みとめられているなど、厳しい現地の状況が心配されます。

 

特に能登半島を中心に県全域が大きな影響を受けている石川県では荒天が続き、9日時点で県内22地区の3,123人以上が孤立しているほか、被災地全域に孤立は解消されたものの引き続き支援が必要な要支援集落が存在しており、応急対応や緊急支援を要する状態が続いています。一刻も早い復旧のために関係機関による活動が展開されているところですが、半島や北陸という地理的条件や地震・津波そのものの大きさとそれに伴う深刻な被害により復旧の兆しが遠い状況です。サニーリスクマネジメントでは、引き続き石川県を中心に令和6年能登半島地震の概況等をお伝えし、今後は危機管理の観点からも当該災害についての情報や見解をお伝えできればと存じております。

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