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身近な詐欺への対処

こんにちは、サニーリスクマネジメントです。

近年、「VUCA(ブーカ)の時代」という言葉をよく耳にするようになりました。「VUCA」とはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉で、元々は冷戦終結後に米軍で戦略の不透明化という意味で使われていました。不透明性は軍事から経済にまで波及し、現在では「VUCAの時代」と経済や社会などの場面でも使用されるようになりました。


「VUCAの時代」という言葉は特にビジネスや教育で聞かれますが、危機管理にも「VUCAの時代」は大いに関係しています。本来用いられている軍事はさることながら、社会の中で発生する犯罪にも関係しているのです。


詐欺とは何か


現代において特に個人に対して身近になったと考えられる犯罪が、詐欺です。古典的な詐欺としては企業等を対象としたものに関しては取り込み詐欺や保険金詐欺などが、個人を対象としたものに関してはコピーの販売やチケット詐欺などが挙げられます。また、企業・個人の両方が対象として該当する可能性のある詐欺も存在し、さまざまな分類が存在しているほか、そもそもの詐欺の類型が多様化しているために詐欺は複雑化・曖昧化していいます。そんな詐欺とは本質的にどのようなものなのか、まずは法令から見ていきましょう。


第二百四十六条(詐欺) 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。


第二百四十六条の二(電子計算機使用詐欺) 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。


第二百四十八条(準詐欺) 未成年者の知慮浅薄又は人の心神耗弱に乗じて、その財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。


第246条で規定されているのが、いわゆる詐欺全般、人を欺いて金品を騙し取ることです。詐欺罪が適用された場合、10年以下の懲役に処されます。第246条の2で規定されているのは電子計算機使用詐欺で、具体的には他人のカード情報をECサイトなどの決済画面に入力して商品を購入することや他人のカードを読み取り機に読み取らせて商品を購入することなどが挙げられます。また、第248条では準詐欺が規定されています。これは、未成年者や認知症を持つ方など、他の人よりも保護されるべき度合いが強い人々に対しての詐欺や誘惑をした結果金品などを騙し取った場合に適用されます。電子計算機使用詐欺と準詐欺についてはここでは取り扱いませんが、どれも厳格な要件が定められている規定です。


変化する詐欺のターゲット


詐欺についての刑法の規定をまとめたところで、現代になって増加した詐欺についてみていきましょう。企業をターゲットとした詐欺では、近年、ビジネスメール詐欺が増大しています。これは、海外の取引先や自社の経営者層などになりすまして偽の電子メールを送信し入金を促す詐欺です。サイバー犯罪としても認識されており、年々緻密に作り込まれたメッセージ画面から本物と偽物のメールの区別が曖昧になっています。このほかにも、投資詐欺や意図的な債務不履行(業務の不実行等)による金品の詐取などのリスクがあります。


個人をターゲットとした詐欺を見てみると、大きな変動が見られます。もしかすると、詐欺というとオレオレ詐欺や還付金詐欺などの「特殊詐欺」が思いつく方も多いのではないでしょうか。息子になりすまして「俺だよ、俺、俺」と電話先で話すことからその名がついた「オレオレ詐欺」に代表されるように、特殊詐欺を行う者は信じ込ませ騙しやすい高齢者を中心に狙います。そんな詐欺でしたが、近年はこれまでターゲットとしては多数ではなかった若年層までもがターゲットになる詐欺が多く発生しており、どれも時代の変動と強く結びついているものとなっています。次にご紹介する3つの事例が、まさにそれにあたります。


デジタル化と詐欺


デジタル化した時代に手放せないのがスマートフォン・パソコン。今やスマートフォンかパソコンの片方は必ず1人1台は持っている、その両方を持っている人も多いという時代です。デバイスを使用している上で気になるのがソフトウェアやハードウェアのセキュリティであり、ウイルス対策ソフトのインストールが勧められています。ただ、それに伴って登場したのが「サポート詐欺」です。これは、画面上に「ウイルスが検出されました」などの文字を表示し「ウイルスを駆除する」といったボタンを押させて不正なWebサイトや決済画面へ誘導し個人情報を不正の取得や決済を行うものです。個人情報を入力したり決済を行ったりしたところでウイルスの駆除を行うようなプログラムは起動しないので、詐欺にあたります。


SNSやマッチングアプリを介した詐欺


スマートフォンの普及とともに広く利用されるようになったSNSやマッチングアプリ。これらのサービスでは見ず知らずの人と直接会話ができたり、多くの人に情報を届けることができたりするため、今では便利なコミュニケーションツールとして日常に溶け込んでいますが、実は想像よりも多くの詐欺のリスクが潜んでいます。SNSやマッチングアプリでみられる詐欺には、次のようなものがあります:


・結婚詐欺(ロマンス詐欺): 「結婚前に借金を清算する必要がある」等で金品詐取

・国際結婚詐欺(国際ロマンス詐欺): ビザ支給費用等の名目で金銭詐取

・募金詐欺: 募金のためとかたって金品詐取(*1)

・ワンクリック詐欺: 会員制Webサイトに関して、勝手に契約済と見せかけたWebページを誘導し、多額の利用料等を支払わせる詐欺

・架空請求詐欺: 架空の名目で代金等を支払わせる詐欺

(*1)意図的に虚偽の目的を掲げて募金を募った場合、詐欺に該当する。事前に用途を明らかにしている場合は該当しない。


また、SNSやマッチングアプリを介したもので詐欺を誘引したり、助長したりするものには次のようなものがあります:


・スミッシング: フィッシングサイトに誘導して個人情報を不正に取得する

・「闇バイト」の募集/勧誘: 特殊詐欺等の実行者を募集している可能性がある

・「パパ活」「ママ活」と称した援助交際の募集: 性犯罪の助長の可能性がある


さらに、近年では大学生・20代~30代の若い社会人・中高年・子育て中の女性などをターゲットとしてマルチ商法や情報商材の販売・コンサルティング詐欺・資格商法などが行われています。ジャンルや売り文句も多種多様です。以下に上述の商法に該当する可能性のある勧誘や宣伝文句を列挙します:


・FXなどの投資や仮想通貨

・内容と釣り合いが取れないほどに高額な情報商材やそれに付随する商品

・起業したい人/インフルエンサーになりたい人をターゲットにした個人コンサルティング

・「アフィリエイト」

・「画像編集やSNS運営はといったWebデザインの仕事」

・「副業」(ただし副業の内容は知らされていない)

・「仕事以外でお金を稼ぐコツ」

ネットワークビジネス(マルチ商法・連鎖販売取引などとも呼ばれる)

・「オンラインサッカー(野球)事業」

・「私はXX歳の頃、スキルも学歴もない人間で〜」

・「自分と同世代の学生が将来や就活に対してどのように考えているのか知りたい」

・「トレンドの人気商品のPR・販売」

・「広告作成や企業のSNSの運用の代行などWEBマーケティングで自分のタイミングで自分の好きなことを発信したりしてカフェや移動時間で収入を得ている」

・「(ネットワークビジネスをしていて)人との繋がりも大事だと思って連絡した」

・「オンラインの英語スクール」「英語教育の仕事」

・「スキマ時間で高収入」

・「SNSマーケティング」

・「どこでも/誰でもスキルを身に付けて安定的な収入が得られる」


書いていくと際限がありません。ただ、上に挙げたものの全てが確実に詐欺に該当するというわけではなく、詐欺や違法行為ではなく本当に自身の資産を増やすために投資をされている方もいらっしゃれば、企業でマーケティングやオンラインでのサービス提供を行なっている方も多くいらっしゃいます。この他にもSNS等では本来不必要な手術・施術の勧誘やカルト・それに準ずるような団体からの勧誘など様々な危険があります。特に「ネットワークビジネス」とも呼ばれる「マルチ商法(連鎖販売取引)」は「限りなくクロに近いグレー(の商法)」と捉えられており、基本的に「クロ」でありながらも特定商取引法によって設けられた厳しい規制の中で特定の要件を満たしながら「限りなくクロに近いグレー」として運営されているのです。誇大広告や違法な勧誘、クーリング・オフの妨害などには大きな罰則が伴うほか、マルチ商法であっても取り扱う商材の価値と価格が大きく離れているような場合には「無限連鎖講」、いわゆる「ねずみ講」としての違法性も問われてきます。


ファンが詐欺に遭うケースも


SNSとの関連で、最近多くなっているのがいわゆる「インフルエンサー」による詐欺。SNS上では世界各地から彼ら/彼女らの特技や趣味などを活かした画像や動画を投稿することで多くのファンを獲得し、時に商品やブランドの広告塔となったり人気タレントになったりする人がいますが、そんな「インフルエンサー」の中にも詐欺を行う者がいます。


例えば、300~400万人以上のフォロワーを有していたガーナの女性インフルエンサーは西アフリカの詐欺グループと共謀し、身分を偽ったうえで米国の高齢男女に対して「父の農場を助けたい」・「アフガニスタンの米軍将校を助けたい」などと偽り、国際ロマンス詐欺や被害者の同情を誘う募金詐欺などの手法で少なくとも7年間で約200万ドル(約2億7千万円超)もの金銭を詐取していました。


また、日本においても女性インフルエンサーがSNSにおける投稿で「(特定のリンクから)ポイントサイトに会員登録するとポイントが貰える」「大企業の企画のため個人情報の管理はしっかりしている」「登録にお金はかからない」としてメッセージアプリ内の当該ポイントサイトを装った未認証公式アカウントへの登録を促し、その投稿を見た人が当該未認証公式アカウントへ登録すると消費者金融会社の口座を作るように誘導され、当該未承認公式アカウント側でIDとパスワードを取得し、さらにそれを利用して取得元の人物の承諾なく30万円が出金されたという事例が発生しています。ただ、この事例に関しては事実関係や経緯、被害の規模が明らかでないために不透明性が高い状況です。


詐欺被害を防ぐには


現在、詐欺はますます複雑で曖昧、不透明かつ巧妙化し続け、様々な立場の人にリスクが広がった最も身近な犯罪のひとつであると考えられます。まず、詐欺被害を防ぐには、リテラシーを持っておくことが必要です。上に挙げたような売り文句を知っておくだけでもリテラシーに繋がります。仮に知人や友人、憧れの人が説明しているものや魅力的な内容のものであっても、一歩下がってひとつ呼吸をおいて、「これって本当に大丈夫なのかな?」と考えることが必要です。また、リテラシーがあれば、「これはちょっとおかしいぞ?」と気づくことができるでしょう。


また、詐欺の被害に遭ってしまったと気づいた場合には、まずは落ち着いて、①支払を停止する、②証拠を確保する、③詐欺を行っている者や会社など、相手との連絡を断つ。この3つを実施しましょう。そして、国民生活センターや消費生活センター、消費者ホットライン「188」、最寄の都道府県警察の相談窓口や警察相談専用電話「#9110」などに相談してみましょう。企業が詐欺に遭った場合は、顧問弁護士等に相談することも方法のひとつかもしれません。




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